北国のEV・PHV 北国のEV・PHVはこんな悩みを抱えています

北国特有の課題

バッテリーや充電インフラなどの弱点を徐々に解決し、普及に向けて弾みがつき始めてきたEVですが、ここ北海道においては、北国・雪国特有の問題点が存在しています。ここでは、本研究会が取り組む、EVにおける北国特有の問題点について取り上げます。

暖房使用時の航続距離

エンジンの廃熱で暖房をまかなうことのできるガソリン車と違い、EVでは電気ヒーターにより暖房を行う必要があります。例えば日産リーフの電気ヒーターは、寒冷地仕様車では5kWの電力を要します。電気ヒーターには走行用のバッテリーから電力を供給していますが、ヒーターの消費電力は、数kW台と大きいため、ヒーターを使用するとバッテリーの電力を消費し航続距離が減少することになります。

冷房も同様に走行用のバッテリーで稼動するため、冷房を使用すると走行可能距離は減少します。EVにおいては、冷暖房の使用が走行可能距離に大きな影響を及ぼすと言えます。 電気ヒーターの使用を抑えるために、消費電力が小さいシートヒーターやステアリングヒーターを装備する車種もあり、工夫はされています。

しかし、北国において車両の暖房性能は、極寒であることや、降雪時に窓ガラスへの着雪を防ぐ意味で重要な「安全性能」と言えます。今後の更なる改良が望まれています。

低温時のバッテリー性能の問題

EVのバッテリーについては、一般的に低温時の性能低下が起こります。充電時間が延びたり、走行可能距離が低下することが起こります。先の暖房の問題と相まって、北国でのEV利用においては大きな問題となります。EVにとって北国の低温環境はとても厳しいものと言えるでしょう。しかしながら、近年では低温での性能低下が極力抑えられたバッテリーも開発されてきており、EVへの採用も始まってきています。

参考情報:
東芝の二次電池 SCiB|i-MiEV「M」にSCiB™搭載」(株式会社東芝)

冬道での走行性能

北海道の自動車保有の特性として、冬道に適した四輪駆動車が好まれる傾向にあります。しかし、現在、日本で販売されているEV・PHVでは、四輪駆動車のモデルは存在しておらず、前輪駆動か後輪駆動の二輪駆動車モデルとなっています。
一方で、EVは、TCL(トラクションコントロール)やABS(アンチロックブレーキシステム)が標準装備されており、雪道でも安定した走行性能を実現しているとも言われています。
オーナーの日常生活における声や試乗会での声を集約して、冬道での走行性能を明確にし、発信していく必要があります。

冬期気象条件下での充電

EV・PHVの充電場所は、通常駐車場になります。駐車場には様々な形態がありますが、特に屋外の屋根のない駐車場の場合、気温の低下に加えて、降積雪の影響もより大きく受けることになります。
冬期の気温が非常に低い北海道では、EVや充電設備への降雪、低温による充電リードや充電ポートの凍結、除雪作業との関連など、北国特有の問題が考えられます。これらの問題を整理し、今後充電設備を設置するEVユーザーに正しい情報を提供してゆく必要があります。

積雪寒冷地でのEVについての取り組み

本研究会以外で、積雪寒冷地におけるEVについて取り組まれている活動を、以下ご紹介します。

  1. 国における取り組み
    1. EV・PHVタウン(経済産業省)
      EV・PHVタウンの取組 - 経済産業省
      青森県、新潟県、京都府による、積雪寒冷地の地域特性を活用した取り組みが紹介されています。
  2. 北海道における取り組み
    1. オホーツクEV推進協議会
      知床を初めとした豊かな観光資源と調和したEVの活用方法を検討し、新たな観光モデルの構築とそれによる地域振興を目的に活動されています。
    2. 稚内新エネルギー研究会
      建設業と地域の元気回復助成事業 - 稚内新エネルギー研究会
      ゲストハウス氷雪にて自然エネルギーで作られた電気を電気自動車と蓄電池に充電する、寒冷地を想定した(市内冷凍倉庫)氷点下環境で電気自動車と蓄電池に充電する。これらの実証実験が報告されています。
    3. EVファクトリー
      北海道内におけるコンバージョンEV(コンバートEV)の普及に向けて、コンバージョンEVの製造および、販売やコンバージョンEVの部品の開発・製造、手作り電気自動車教室を開催されています。
    4. 北海道の電気自動車ポータルサイト EVに乗ろう!
      実際のEVオーナーである方によって作成された、北海道発100%電気自動車の情報サイトです。EVユーザーの視点から、充電スポットや電気自動車への疑問を検証されています。
    5. 北海道コンバートEV普及研究会
      コンバートEV関心を持つ、主に個人を対象に、情報交換や交流の場を提供することで、コンバートEVに「手を出す」ひとを増やすことを目指す団体です。
  3. 東北地方における取り組み
    1. 青森県の電気自動車等の導入普及に向けた取組
      青森県では、化石燃料に依存している自動車用動力源を電気に移行させることにより、エネルギー需給構造の転換に貢献するため、電気自動車やプラグインハイブリッド車の導入普及に取り組んでいます。
      http://www.pref.aomori.lg.jp/sangyo/energy/EVpHV.html
    2. あきた次世代自動車タクシー、公用車での、電気自動車の年間走行データ収集実験
      秋田県では、「あきた次世代自動車実証コンソーシアム」の組織全体を継承した「あきた次世代自動車研究会」により活動が進められています。
      http://www.akita-pu.ac.jp/stic/ev-consortium/indexs.html

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